上野はしご

今日は午後からムスメの保育園の保護者会で、
午前中だけ仕事するのもつかれるので
一日休みをとって、上野に出かけた。
目的は受胎告知とロシア美術館展。
まさか東京で見れるとは。
私はモナリザよりもこっちの方が好き。

受胎告知、印刷で何度も見てるから妙な気分ではあったが
絵の具の生っぽさや服や植物の細かさや色は
実物を見ないとわからないもので、
また、実際のあの大きさを遠くから、近くから眺めてみて
絵の完璧さを再確認する。
なんであの絵は、完璧なんだろうなあ。
ルネサンス以前の受胎告知は、いかにも「教会のために作られた宗教画」
な感じで、キリスト教色が強すぎるきらいがあり、
ルネサンス以降の他の画家のものは、物語性が強すぎる。
けっこう横長の構図なんだが、ガブリエルとマリアの距離感が
おしつけがましさを排除する形になってるような。
マリアの幼さも良いのだけど、ダビンチの描いたときの
年齢(20代とのこと)にもよるんだろうか。


そのあと同じく上野公園内にある都美術館で
ロシア美術館展を見る。
7年前にサンクトで見たはずなんだが、
全然覚えてない。
結局日本語の解説の補助がないかぎり、記憶に定着しないんだな。
それに似たような印象の薄い絵が多いし。
ダビンチの後なんで、どうしても絵のゆるさを気にしてしまうのだが
徐々に慣れてきて、19世紀のリアリズム絵画が思いのほかよかった。
丁度トルストイが民衆の話を小説にしたように、
画家たちが貴族の注文絵画よりも、農民や貧しい人々の姿を描き出したころのもの。
子どもの絵が特に秀逸。
復活祭の日におじいさんがイースターエッグをひとつだけもらってきて
それを眺めるぼろぼろの服を来た子ども。
墓地にいる孤児の兄弟。物乞いの兄弟。農家の初子。
農作業の間に授乳される子とその兄弟。教室での授業をのぞいている学校に行けない子。
「こういう底辺へのまなざしのない芸術はだめよね」と
にわかプロレタリアートな気分になったりして。


ロシア美術館の目玉のレーピンの絵も多かった。
意外なのはニコライ2世の肖像画を描いていたこと。
やわらかい光が差し込む宮殿で、ひかえめに佇むニコライ2世を見て、
「このひとに戦争は無理」と納得する。