植田正治の「僕のアルバム」

最近ひまさえあればこの本を見ている。
植田正治の未発表作品集で、奥さんの紀枝さんをモデルにしたものを中心に編集されたものなのだが。
これが。
もう。
本当は出したくなかったのかもなあ、というくらい密。
最初に出てくるのは、新婚当時の紀枝さん。
19歳ということで、まだまだ子供のようなかわいらしさ。
大事に大事に育てられたのだろうと思う品のよさ。
その初々しさは子供がうまれてからも変わらない。
そして間があく。おそらく戦争が挟まったためだと思う。
一瞬、「写真館のオバチャン」なスナップがあり、
「どんなきれいな人も子ども4人うむとこうなるよねー」と思いきや。
「子育てがちょっと一息つけるようになった」時の紀枝さんがすごい。
失った若さのかわりに恐ろしいほどの、俗な言葉でいう「艶」が。

砂丘でポーズをとる紀枝さんのやや奥で、モデルを招いての撮影会をしている構図の写真がある。
「モデルはいますが私は妻を撮りたいので」という意志がうかがえる、
とても愛のある一枚。
演出の仕方や、色調、構図など、学ぶことの多い植田正治であるけれど
「写真での愛情表現」も学びたいところ。
僕のアルバム