グランド世界の美術

かつて「中流階級」という幻想が日本を覆っていた頃、
少し余裕のある家庭は「全集」を家に置いていた。
わたしの実家がそうです(笑)
で、母親ったらそのクセが抜けてなくて未だに「全集」モノを買うのよね。
まあ読んでるからいいけどさ。
覚えてるだけでも、百科事典、ブリタニカ、世界文学全集、日本文学全集、古典日本文学全集、皇室の至宝、
日本の美術、夏目漱石全集と、まあごひいきの本屋も大喜びってなもんで。
で、その中で「グランド世界美術」は面白かった。年代別に分けられた美術全集って意外となくて、
その時代の、けっこうマイナーな芸術家までフォローしてあるのはうれしい。
似たようなものがあればそれを買ったかもしれないが、ないみたいだし、
慣れ親しんだものが懐かしくて、古書ネットで格安で買っちゃった。25巻。
運送屋が汗だくで運んでくれましたわ。
それを見た夫が、「これはお祖母ちゃんの家にもあったな」と言っていた。
夫のおばあさまの家は美術にあまり縁のなさげな家だったからびっくりだ。
ということは当時これを買った家庭って相当あったんだろうなあ。
私も知り合いの家でちらほら見かけたことあったもの。
そのおかげで今古書ネットで腐るほど出回っているんだろうけど。
で、小さい頃に初めて手に取ったのはその中の「ベラスケスとバロック美術」。
これがまあとっても官能的で。ルネサンス後の爛熟したところが
あるのよね。あとベラスケスって醜いものを美しく醜くく描くのが上手な人で。
小さい子には毒てんこもりだったかもしれない。