岡田さんの本は30分で読める

岡田さんが初めてタレント本「無欲」を出した。
まったくラジオでは告知してなかったのだが、PONを久しぶりに録画したらポスターが張ってあったので、ちゃんと発売日に買えましたとも。
本当に、普通の、ちょっと陽気な少年がなんでか今芸人になりましたという過程が書いてある。美談、ええ話率低し。よかったなー。
影ですごい努力した、とか漫才師になろうと決めたあの日あのとき運命を感じたとか
自分をどうにかしてええかっこしようとかそういうのが全然ない。
例えば「高校生の思い出といえば夕焼けニャンニャンくらい」と書いてある。
でもこの頃岡田さんは「ベストヒットUSA」にもはまって、英語で歌も歌える。
でもそういうことは書かない。話に必要のない「脂身」は乗せないのだ。
ほんと「無欲」だわ。
親に大事に育てられて、どこまでも普通。増田にすごく口説かれたから漫才師になったけど、その理由を自分の中にみつけようとしない。
徹子の部屋で、市川笑也
「歌舞伎役者になるという将来設計などなかった」と言ったときに徹子さんが
「でもこの世界で大成されてる人というのは、「そのつもりがなかった」って人がほとんどよ」と言っていたのを思い出す。
自分の思う自分と、人から見える自分とがあって、それをどっちにゆだねるか、どっちの判断を大事にするか、ということなんだろうな。
「自分は役者になりたい、サラリーマンなんか向いてない」と思ってても、人が見たら「絶対無理やん」て人がたくさんいて、まあそういうひと相手に養成所が大もうけしてるわけなんだけど。
やー、ますます好きになったわ。
あと嫁(元漫才師)に頭の上がらない理由も美談にせずにあっさり、しかし的確に書いてあった。
以前「松本(美香)さんとは目もあわせられん」と言っていたのは、今でも申し訳ないという気持ちがあるからなんだな。
当時(ボキャブラ時代)-4℃の方がテレビ出てたし、それを途中でやめさせた、将来のまったく見えないコンビを解散させたのならまだしも、そこそこ仕事があったコンビを男の都合(結婚というやや古い理由)でやめさせた後ろめたさをずっと持っているという。
夫婦親子というのは平等でありたいとは思うものの、どうしても支配、被支配の関係がでてくる。そのとき、支配するなら後ろめたさを忘れないで、というの事を信田さよ子さんは言っていた。えらいやん、岡田―

ただ、そういう普通の常識人がおもしろいと思うことが、芸人の世界で面白いというわけではなく、
「ホームラン打つつもりで打席に立ってるのに大振りの空振りばっかり」
という現在のスベリ道につながっているわけだ。
またその理由が「一度チャンプになったからにはせこいバントなんかできない、いつも大振りで」というのが笑えるし、潔い。ひな壇テクに凝って小手先でわらかそう、というのではないようだ。
だから、ブラマヨアンタッチャブル千原ジュニアと一緒にいるとこなんかを見てると、彼らの笑いのセンスがうらやましく思えるのだけど、自分を語る作業としては他の芸人本より「無欲」の方が好きだし、芸人らしいと思った。「笑ってください、感動なんかしないでください」という姿勢、素敵です。

無欲 岡田がおかだである理由。